バンクーバーに初めて来て「ホームレスが多い!」と感じた人は結構いるのではないでしょうか。
確かにバンクーバー、特にダウンタウンでは、路上に段ボールを敷いたホームレスがいる光景をよく見かけます。
では、実際にバンクーバーはホームレスが多いのでしょうか。
そして、ホームレスにChange pleaseと言われた時にどう答えればよいのか。
今回は、バンクーバーの気になるホームレスや治安情報を紹介します。
これを読めば、バンクーバーで突然ホームレスに声を掛けられても落ち着いて対応できます。
<こんな人におすすめ>
・バンクーバーは治安が良いと言われているけれど、実際はどうなのか知りたい人
・ホームレスがいると治安が悪いのではないか心配な人
・Change pleaseと言われた時の返事に困っている人
バンクーバーはホームレスが多い?
カナダのホームレスの数は日本の51倍!?
バンクーバーに限らず、カナダ全体でホームレスは大きな社会問題になっています。
日本とカナダ、それぞれのホームレス人口を比較してみます。
※カナダのホームレスの数は、カナダのホームレス事情を調査し、ホームレス支援につなげる活動をしているNGO団体 The Canadian Observatory on Homelessness(COH)が2016年に発表した統計
※日本のホームレスの数は、平成31年4月に厚生労働省が発表した平成31年1月時点での『ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)結果について』
をそれぞれ参照しています。
ホームレス人口 | |
カナダ | 235,000人 |
日本 | 4,555人 |
もちろん、カナダも日本も発表された時期、調査方法が違うため、一概に比較することはできませんが、単純計算でカナダのホームレスの数は日本の約51倍です。
さらに、今回のパンデミックによる景気悪化が追い打ちをかけ、パンデミック以降のホームレス人口は確実に増えているという報道もあります。
今回参考にしたカナダのホームレスの実態調査を行っているNGO団体COH(The Canadian Observatory on Homeless)によると、50,000人程度の明らかになっていないホームレスがいると発表しています。
つまり、発表されている以上の人数の人がホームレスということになります。
バンクーバーのホームレスの数は?
2020年3月3日~4日にかけて、バンクーバーのホームレス人口の統計調査が行われ、バンクーバー一帯で合計3,634人のホームレスが確認されました。
※2020 Homeless Count in Metro Vancouver Preliminary data report参照
カナダ全土に235,000人のホームレスがいるのに対して、バンクーバーが約4,000人。
思っていたほど多くはないように感じます。
これは2013年の統計なので少し古いですが、カナダのいくつかの都市のホームレス人口を比較した調査結果が同じくCOHから公表されています。
都市全体の人口 | ホームレス人口 | 人口に占める ホームレスの割合 | |
バンクーバー | 603,502 | 1,602 | 0.27% |
トロント | 2,615,060 | 5,086 | 0.19% |
カルガリー | 1,096,833 | 3,190 | 0.29% |
エドモントン | 812,201 | 2,174 | 0.27% |
これを見ると、カナダで最もホームレスの人口が多いのはトロントであることが分かります。
ただし、トロントは都市全体の人口が多いため、必然的にホームレス人口も多くなっているという理由もあります。
そこで、注目すべきなのが、人口に占めるホームレスの割合です。
トロントは人数こそ多いですが、人口に占めるホームレスの割合は他の都市と比べて低いことが分かります。
一方でバンクーバーはホームレスの人口は少ないですが、人口に占めるホームレスの割合は0.27%とエドモントンと並んで高い割合を占めています。
そして、これは2013年のデータで、2020年3月の時点でバンクーバーのホームレスの数は3,634人です。
バンクーバーの2020年時点での正確な人口が発表されていないので比較ができませんが、バンクーバーのホームレスの割合は増加傾向にあることは明らかです。
バンクーバーは他の都市よりホームレスが過ごしやすい
人口に対してホームレスの割合が多い理由として考えられるのは、バンクーバーが他の都市よりもホームレスが過ごしやすい環境にあるからだといえます。
トロントやモントリオールは、冬になると外の気温は氷点下になり、雪もかなり降ります。
家がなく、外で生活するホームレスにとって致命的な環境です。
一方でバンクーバーは、冬でも氷点下になる日は少なく、雨は降りますが雪が降る日は年間で数日程度。
気候も穏やかで外で生活するホームレスにとって過ごしやすい環境だといまえす。
バンクーバーのホームレスの特徴
かなり積極的に話しかけてアプローチしてくる
バンクーバー、特にダウンタウンではホームレスを見かけない日はないほど、日常的にホームレスに遭遇します。
そして、バンクーバーのホームレスはとてもアグレッシブで行動的です。
バスに乗ってきたりカフェやレストランなど店内に入ってきたりと、積極的に通行人やお客さんに声をかけてお金を要求します。
Give me change.
Change please.
Changeは「チェンジ=変わる」ではなく、コインやお金のことです。
私はバンクーバーに来て初めて英語で会話をしたのが、ホームレスの方からのChange pleaseでした。
最初は聞き取れずSorryと聞き返したところ、お金を要求されていることが分かり、これまたSorryと立ち去りました。
(Sorryしか言っていないんですけどね…笑)
薬物中毒やアルコール依存症の人が多い
バンクーバーのホームレスの中には、ドラッグによる薬物中毒やアルコール依存症といった人が多くいます。
そのため、そばを通り過ぎる時に日本では嗅いだことのないような強烈な異臭を感じることがあります。
大麻が合法なので大麻臭もありますが、時には違法ドラッグの臭いという可能性も。
また、路上に注射器や注射針が落ちていることも少なくありません。
確実に医療目的ではないやつです。
ホームレスの雰囲気も、視点が定まらずふらふらとしていて、突然笑いだしたり怒鳴り散らしたりと不気味な様子であることが多いです。
そういった場合、多くがアルコール依存症か薬物中毒である可能性が高く、危険が及ぶ場合もあるので、距離を取ることを強くおすすめします。
ホームレスへの接し方4つのポイント
1、相手の存在を無視しない
バンクーバーでホームレスとかかわる際に1番大切なポイントなのが、相手の存在を無視しないことです。
ホームレスもひとりの人格を持った人間で、薬物依存やアルコール依存といったトラブルを抱えていても、人であることに変わりはありません。
彼ら自身もプライドや自尊心を持って生活しているので、その存在を無視してない物のように扱うと、かなり腹を立てます。
場合によっては怒って追いかけてくる、暴言を浴びせかけてくるといったことも。
そこで、Change pleaseとお金を要求されたら、一言Sorryとしっかり伝えましょう!
トラブルに巻き込まれたくないからと無視する人がいますが、それは逆効果になることもあります。
お金を要求されたり、しつこくせがまれたりする時にはSorryと一言声を掛けてその場を立ち去るなど、リアクションを取りましょう。
2、ホームレスがいる場所を通らない
2つ目は、そもそもホームレスがいる場所を通らないことです。
どこの道でもカフェの店先でもホームレスを見かけないことはないので、少し難しいですが、ホームレスが多く集まっている場所というのがあります。
そういった場所に近づかない、通らないという対策を取るのもひとつの方法です。
また、人気のない郊外の路地や、駅周辺などにホームレスがいる場合もあります。
そういった危険な地域やスポットを事前に把握しておくことも防犯対策として効果的です。
ホストファミリーやシェアハウスのルームメイトなど、その場所をよく知る人に危険な場所について尋ねて、最新の情報を共有してもらいましょう。
3、お金は渡さないのが基本
3つ目は、ホームレスにお金を渡さないことです。
なんだか冷たい人間のように感じますが、ホームレスを本当に助けたいのであれば、先ほど紹介したCOHや他のボランティア団体のような組織に寄付をしましょう。
直接彼らにお金をあげても、本当の意味で助けられるわけではないのです。
先ほど紹介したように、ホームレスの中には薬物中毒やアルコール依存症といったトラブルを抱えている人がいます。
そういった人たちにお金を渡すと、ドラッグやアルコールを買うためにお金を使ってしまうことがあるからです。
じゃあ、バンクーバーの人たちはホームレスを助けないのか?
そういうわけではありません。
私がカフェで友達とお茶をしていた時に、ホームレスが店内に入ってきて、その場にいたお客さんにお金を頼み始めたことがありました。
みんなSorryと言ってお金を渡すことはなく、そのまま終わると思ったのですが、そこへカフェの店員がいくつかお店のパンを包んだ物を渡して、彼に出ていくように声を掛けたのです。
こういったシーンをバンクーバーでよく見かけます。
ホームレスにお金を渡すことはできないけれど、食べ物をあげるのであれば、その日の彼らの食事を助けることになります。
4、目を合わせすぎない。意識しすぎない
最後は、1つ目のポイントと正反対のようにも見えますが、目を合わせ過ぎない。意識しすぎないことです。
無視はしない。
ですが、意識しすぎても逆に不自然ですし、ホームレスたちにとって不快な態度にあたる場合もあります。
最初は見たことのない光景に思わず注目してしまうかもしれませんが、凝視したり、ネタにしようと思って写真を撮ったりはやめましょう。
ホームレスを厄介者やかわいそうな人たちとして扱うのではなく、バンクーバーの生活や日常に当たり前にいる人たちと同じように認識することが大切です。
バンクーバーは世界的には治安が良い都市
ここまでバンクーバーのホームレス事情について紹介しましたが、ホームレスがいる=治安が悪いというわけではありません。
確かにホームレスが多く集まっている場所には、注射器が落ちていることも多いですし、犯罪率も高くなります。
しかし、バンクーバーは基本的には治安が良いことで知られています。
『世界で最も住みたい都市ランキング』のトップ10入り常連都市
バンクーバーは、イギリスの経済誌”The Economist”による『世界で最も住みたい都市ランキング』で2019年には6位にランクインしているのです!
このランキングでは、世界140都市を対象に、政治的、社会的な安定性や犯罪、健康医療制度、治安など様々な項目が評価され、ランク付けされます。
2018年も6位、2017年3位と常にランクインし続けているバンクーバーは、世界的に治安が良いと評価されています。
バンクーバーに1年半暮らした筆者が感じたバンクーバーの魅力を紹介しています。
世界的に治安がいい=日本と同じぐらい安全ではない
世界的には治安が良いと評価されている都市でも、日本と同じくらい安全かどうかは別の話です。
日本は世界的にも治安や安全面で高い評価を得ている国のひとつで、落し物が交番に届けられ手元に帰ってくる国として海外の人たちか驚かれる国でもあります。
日本のカフェで荷物やラップトップを置いたまま席を立っても盗まれないなんて、カナダに限らず海外では考えられない話です。
ちなみに、バンクーバー図書館VPLには「自分の所持品に注意を払いましょう」という警告文が英語以外にも様々な言語に訳されて各テーブルに置いてあります。
その中にはもちろん日本語での警告文もあるのですが、よくラップトップや荷物をそのままにトイレに行く日本人がいて、私は勝手にドキドキしていました。
その時は盗まれずに無事でしたが「見ているこっちが冷や冷やなので気をつけてー!」と叫びたかったです(笑)
バンクーバー図書館VPLの魅力について下記記事で紹介しています。
日本と同じ感覚でカナダで生活するのは非常に危険です。
治安の良し悪しは場所による
では、バンクーバーの治安は悪いのでしょうか。
答えは「場所によります」
バンクーバーには、確かにホームレスが多く集まり治安が良くないと言われているエリアがいくつかあります。
代表的な場所をいくつかピックアップしました。
<バンクーバー危険エリア>
●チャイナタウン
●ヘイスティングス・ストリート
●サーレー
チャイナタウンやヘイスティングス・ストリートはダウンタウンからすぐ近くにあるので、観光しながら歩いているうちに気づいたら入ってしまったということもあります。
チャイナタウン
ヘイスティングス・ストリート
ヘイスティングス・ストリートとメインストリートの交差点のあたり、地図の部分にホームレスに食事を提供する炊き出し所があるので、かなり治安が悪いです。
バンクーバーの治安が悪いエリアについては別の記事で詳しく紹介します。
上で紹介したような、治安が悪いといわれているエリア以外は、基本的に安全ですし人の目もあるので犯罪に巻き込まれるというケースは少ないでしょう。
それでも、場合によっては治安が悪いエリアに迷い込んでしまったり、向こうから絡まれてしまうこともあり、そういった時にはすぐに誰かに助けを求めることは必要です。
まとめ
バンクーバーのホームレスとのかかわり方や、治安について紹介しました。
私も初めてバンクーバーのホームレスの多さを目の当たりにした時には、戸惑いました。
しかし、カナダの社会問題について知ると「かわいそうな人」という抽象的なイメージから「私たちと同じ人で、いろいろな問題を抱えている人」「解決のためにカナダ政府や州はどのように動いているのか」というより具体的なイメージを持つようになりました。
日本ではあまりかかわることもなく、考える機会も少なかったであろうホームレス問題。
カナダ政府や州は、事の重大さを理解して問題解決のために様々な取り組みを行っています。
ワーホリや留学でカナダの文化に触れると同時に、カナダの社会問題についても興味を持つ機会になれば幸いです。
ポイント
<バンクーバーはホームレスが多い?>
・カナダ全体のホームレスの数は235,000人!日本の約51倍の数
・カナダで最もホームレスの数が多いのはトロント
・バンクーバーはホームレスの数は少ないが、増加傾向をたどっている
<バンクーバーのホームレスの特徴>
・かなり積極的に話しかけてアプローチしてくる
・薬物中毒やアルコール依存症といった課題を抱えている人が多い
<ホームレスへの接し方4つのポイント>
1、相手の存在を無視しない
…Change pleaseと言われたら、Sorryと断ってその場を立ち去る
2、ホームレスがいる場所を通らない
3、お金は渡さないのが基本
4、目を合わせ過ぎない。意識しすぎない
<バンクーバーは世界的には治安が良い都市>
・『世界で最も住みたい都市ランキング』トップ10入り常連都市
・世界的に治安が良い=日本と同じくらい安全ではない
・治安の良し悪しは場所による